危ない体験は悪いことか?(4月号)

 近年の危ないものがすべて排除された環境で育つ子どもは、色々な事にチャレンジできないまま体だけが成長し、本当の危険や恐怖を実体験のなかで得ることができません。そうなると、自分の痛みを知らないばかりか他人の痛みにも共感することができません。それは、子ども自身はもちろん、その周囲の人にとっても危険なことです。例えば、幼少時に高いところに登らせてもらえずに「高いところはこわい」という感覚をもてないまま大人になったとしたら、悪ふざけのつもりで命が危険にさらされるようなことをやりかねなくなります。工作の時にハサミで指を切ったり、料理の時に熱い鍋を触って火傷をしたりする体験も決して悪いことではないのです。

 また、「実際にやってみる」に勝る学びは存在しない事実があります。大人の仕事と同じで、リスクがあるからと絶対に失敗しない簡単なことだけをやっていたら成長できません。必要なことは、たとえ失敗しても立ち直って「また挑戦しよう」というチャレンジ精神を持つことです。そのために失敗(ケガ)した気持ちを受け止め、次はどうするといいか子どもと話し合うことで新しいことに挑戦する意欲に繋げることができます。失敗した(するだろう)からやらせないというのは子どもを守ることには繋がらず、自分で考えたり痛みに共感したりする機会を奪い、挑戦する意欲も削ぐことになってしまいます。

 このように、大人がするべきことは危険なものを遠ざけるのではなく、本当に危険なものとの区別を自分でつけられるよう、子どもが体験し考えられるようにしていくことだといえます。

(副園長:佐藤毅佳)