乳幼児の言語習得において、テレビやCDの利用に有効性はない(12月号)

「スクリーンタイム(テレビやスマホを使用する時間)は乳幼児の発達に影響しうるので気を付けましょう」とは乳幼児健診などでよく聞く話です。アメリカ小児学会は「2~5歳のスクリーンタイムは1時間まで」「2歳未満は0時間(見せないこと)」としています。合わせて、動画を視聴する場合は保護者と一緒に見ることを推奨しています。日本小児科学会でも、「乳幼児のテレビ・ビデオ長時間視聴は危険です」と題する緊急提言を行っています。

乳幼児は著しい速度で言語を獲得しますが、その一方で言語獲得の過程において基礎となるメカニズムについてはほとんどわかっていません。

アメリカの研究で、乳児に同じ話者と教材を用い「人を介して聞いた場合」「動画のみを視聴させた場合」「音声のみを視聴させた場合」での言語習得能力の差について調べたそうです。その結果、事前に録画、録音されたものでは習得に差はなく、直接人が介して生で声を聞いていた場合に習得率が高くなる傾向を示しました。つまり、乳児の言語は社会的相互作用によって強化されている可能性があることになります。

このように、乳幼児にスクリーンタイムがNGと言われる理由の1つに、録画(録音)された音声からの学習効果がほとんどないといえる点があるようです。乳幼児が画面を集中してみているようでも、激しい動きに興味をひかれているだけであり言語の習得には役立たないといえます。また、聞くだけで言語を習得できることいった動画やCDもありますが、商業的な注目を集める目的が大きく効果には疑問が残ります。乳幼児が言語を習得するうえで大切なことは、前述の理由からスクリーンタイムをなくし、しっかりと乳幼児に生の声で語りかけていくことだと言えます。(副園長:佐藤毅佳)