世の中便利になりましたが、子どもの生き物としての成長速度は人類誕生から基本的に変わっていません。
その中で、世の中には一見すると楽ができそうですが実際には子どもの成長を妨げる道具が多く発売されています。2本の棒で挟んで箸を使っているように見せる補助箸、あまり交換しなくてもいいオムツ、噛まなくてもたべやすい食事。一見すると大人が手をかけなくても、子どもが自分一人で生活しているように見えますが大きな間違いです。不便、不快を自力で解決しようと思う気持ち、それを実際に解決する能力の成長機会を奪っているためです。実際に、今の年長児の能力は平成に入った当初の年少児程度しかないと報告されています。
交換頻度の少ない、着ている子も快適なオムツ。不快感を覚えず、その場で出せばいいのであえてトイレに行き、排泄しようと思わなくなります。また排泄をコントロールする神経が発達せず、その獲得時期も逃してしまい結果いつまでもオムツがとれなくなります。
箸のような見た目で食事のできる補助箸。動かすために必要な支える力が全く違うため箸が使える手助けにならないので、いつまでも普通の箸は使えません。
やわらかい食事はアゴの力が鍛えられないので食べ物を嚙み砕いて飲み込みやすくできなくなるだけではなく喉周辺の筋肉もつかないので嚥下力が低下し誤嚥もしやすくなります。また普段から口をポカンと開けたような状態になり顔つきがのっぺりとした感じになったり歯列不正の要因になったりします。
生き物として自立で目指すべき場所は自分一人で日々を生きていけるようになることです。面倒で手間であっても人類誕生から成長して能力獲得に至るまでの手順に変化はありません。一見、楽ができそうな道具を使うと結局子どもは自立できなくなってしまいます。子どもの能力獲得に向けて手間がかかり面倒で時間がかかっても、その道具や子どもへのかかわりが本当に自ら立つために必要か考えてみてください。
(副園長:佐藤 毅佳)