甘く見てはいけない「睡眠時間」(12月号)

 遅寝や寝不足が、子どもにどのような影響を及ぼすか知っていますか?アメリカ国立睡眠財団の研究報告による子どもの脳を育て、正常に働かせるために必要な睡眠時間は以下の通りです。0~3か月:14~17時間、4~11か月:12~15時間、1~2歳:11~14時間、3~5歳:10~13時間、6~13歳:9~11時間。発達途中の子どもの脳にとって、睡眠時間の確保は他のことでは替えがきかないほど重要なものです。

 早稲田大学では5歳児を対象に①睡眠時間が9時間台、②遅寝遅起き・睡眠時間が10時間台、③早寝早起き・睡眠時間が10時間台、の3つのグループに分け、力を発揮できるかの指標として両手握力の数値を1日比較しました。結果、①、②のグループは1日を通して力をうまく発揮できず、③のグループだけが1日を通して力を発揮できるという結果でした。つまり、「睡眠時間を満たすこと」「早寝早起きであること」の2点が大切なのです。「そんな時間には絶対寝ない」という声が多く聞こえてきそうですが、そこを改善していかないと子どもは毎日寝不足ということです。

 睡眠不足だと、無気力でボーっとしている、 疲労が回復しない、イライラする、やつあたりする、突然キレる、やる気が出ない、何事も面倒くさい、といった症状になります。このほかに、東北大学加齢医学研究所で睡眠時間と脳の発達について調べた結果、睡眠時間が短い子どもほど記憶を保存する海馬の容積が小さいことがわかりました。また、睡眠中のレム睡眠時に私たちの脳は日中に起きた出来事などの記憶を整理して定着させる作業を行なっていますが、睡眠不足でレム睡眠による記憶を定着させる段階をおろそかにすると、いくら勉強しても学習した内容が記憶として一切残らず努力が無駄になるという別の実験結果もあります。

 睡眠時間をはじめ子どもの日常の生活サイクルを大人の感覚で考えていては取り返しがつかないことになってしまいます。子どものより良い成長のためにも気を付けていきましょう。

副園長:佐藤 毅佳