生物として生きていくために必要な力を育てよう(8月号)

 ニュースで学校や保育施設において事故が起きた際に「現場での対策は?」といった声をよく聞きます。現場で一番多い対策はいたって簡単です。「触れさせない」ことです。

 それが教育的にみれば良いものであっても、学校等の教育現場では人的負担を増やしたり、リスクをおかしたりしてまで世間で騒がれるものに触れさせようとはしません。教育現場では、限られた時間の中で個別に危険なことに対して働きかけることは難しいのが実情です。

 ですから、本当に大切なことは危険なものにどう対処するかを知り自身で対処できるようになることです。例えば窒息に関してですが、リンゴやウズラの卵が取り上げられたかと思います。それらを避けたとして、他の物(例えばナシやブドウ、トマトやマメなど)は大丈夫なのでしょうか。この場合は子ども自身がよく噛んで座って食べられるようになれば解決することです。

 遊具での遊びも、正しい使い方を実際に遊びながら学ぶことが大切です。例えばジャングルジムを子どもが怖いからやめておくという感覚を持つことは大切ですが、大人が見守りながら挑戦したくなるように働きかけ自身でケガ無く使える方法を身に着けられるようにする必要があります。こうして身体能力にあった遊具の遊び方をすれば、まずケガはないですし仮にあったとしても大事にはなりにくくなります。

 このように、避けることで起きるのは、能力獲得機会の喪失です。窒息事故のニュースを見て、自宅でも怖がって食べさせなければ触れることは無くなります。遊具の事故も同様で、撤去しておしまいです。

 結果として安全が確保されるのではなく、必要な能力を育てる機会を失います。自分のできる限界を予測し・実行する力。危険を予測し避ける力。こうした「生物として生きていくために必要な力」を意識して育てていきましょう。

副園長:佐藤毅佳