食事で変わる、将来の社会性(3月号)

 食事の意義として必要な栄養をとり健康な身体を維持していくことが挙げられるかと思いますが、幼少期の食事にはこれ以外にも重要な役割があることがわかっています。

「自然や食事を作ってくれた人に対する感謝を育むことができる」「コミュニケーションをとりながら楽しく食べられる」「一緒に食べることで絆が深まる」「食事の作法が学べる」

 このように、だれかと食事を共にすること=共食(きょうしょく)は、思いやりの心や、コミュニケーション能力といった社会性を育みます。しかし近年はライフスタイルの多様化から

・孤食(こしょく)=家族がいるにもかかわらず一人で食事をすること

・個食(こしょく)=家族全員がそれぞれ別々のものを食べること

・同席食(どうせきしょく)=一緒の席にいるが、相互に関わりを持たない食事

こういったスタイルもみられるようになりました。

 しかし、厚生労働省の調べでは、家族で食事をする機会が滅多にない子どもは家族で食事をする機会がある子どもよりもコミュニケーション能力が低く、誰かに話しかけられた場合に受け答えがうまくできないリスクが70倍もあるという結果が出ています。会話の理解が遅れるリスクが44倍も高いという結果も出ており、子どもの頃の食体験がコミュニケーション能力に影響を及ぼすことがわかっています。

 また、社会性には脳内の「PQ(Prefrontal Quotient)」という知性群の発達が大きく関わっています。PQは人と人との関わりによって発達するものであり、幼児期を豊かな社会環境の中で育てることがPQを発達させる上で重要と言われています。引きこもりやニートは、このPQが十分に発達していないことが要因として挙げられ、「孤食」のような食事の過ごし方の変化もその一因となっているのだそうです。

日々の食事をする環境が将来の社会性に影響を与えるとなると、体の成長にかかわる栄養と同等に気にしていく必要があるといえます。

副園長:佐藤 毅佳