近年、言葉の発達が遅い、対人関係をうまく築くことができない、落ち着きがない、集団生活が苦手、といった様子から幼児期に発達障害と診断されるケースが増えているようです。発達障害の原因は生まれつきの脳の機能障害と考えられていますが、明確な発症メカニズムは解明されていません。診断が増加した背景にはこうした従来のもののほかに、家庭での生活習慣が原因で年齢相応に適切に成長できずに同じような行動をするケースが含まれるようになったためと考えられます。
そうした行動の原因として考えられるものに睡眠不足があります。3~5歳児で必要とされる睡眠時間は10~13時間です。質のよい十分な睡眠は子どもたちの運動能力や記憶能力を高めることがわかっています。逆に眠りの問題を抱えた子どもには、認知機能の低下、日中の眠気やイライラ感、集中力低下などが起こります。この他にも日中の問題行動(多動、攻撃性、常同行動など)が強く出やすくなります。
他の原因にはテレビ・スマートフォンの使用があります。日常的に動画を朝から晩まで見ている、隙間時間があればスマホをもてあそぶ、ゲームをするといった行動は大人も子どもも「脳の前頭前野を硬直させる」ことが研究でわかっています。動画を視聴している間、脳は「見る」と「聞く」のみに使われており、反対に「思考する」ための前頭前野は使われずに血流が低下し硬直していきます。子どもへの影響は顕著で動画の視聴時間が長いほど言語性知能指数が低くなること、大脳皮質の発達が悪くなることが判明しており、キレやすくなったり自身の衝動を抑えられなくなったりもします。これらが原因となり言語能力の低下や、注意力が極端に散漫で衝動性の高い行動が見られることで診断が増加していると考えられます。
子どもに落ち着きがない、あまり言葉を発しないといった場合、一度日々の生活習慣を見直してみるとよいでしょう。
副園長 佐藤毅佳