危険を回避する能力を育てるために(6月号)

 昨今の風潮として、危ないものはとりあえず禁止して触れられないようにしていきます。その結果として、子どもに危険を予測・回避する能力が無くなっています。

昔:転ぶと怪我をして痛い思いをするから、転びにくい場所を選んで進み転ばないようにバランスを取ろうとする。

今:転ぶと怪我をして痛い思いをするから、つまずく心配のない平らな地面に整備し、転んでも怪我をしない素材の地面にする。

 結果、転ばないために周りの様子を見たりバランスをとったりできなくなります。できなくなるというより「やろう」という考えすら頭に浮かばなくなります。何も気にしないで安全が確保されているならば当然です。もちろん後遺症が残るような大けがに繋がることはいけません。ですが、危ないと想像する能力を育てなかったために逆に大けがをしてしまう場合が多くあります。無条件に周りが安全(と思う)環境を用意し続けると、何をしていても危険なことに合わないと誤認しそれが当たり前になってしまいます。

イヤホンで耳をふさぎ、スマートフォンを操作して目を奪われながら歩いても、交差点では車が出てきて自分とぶつかって事故にあうことはないだろうと思っている。

 この場合、周りの音が聞こえなくても自分は平気「だろう」、ちょっとくらい前を見ていなくても平気「だろう」、というような根拠のない希望的観測で動いています。逆に痛い思い・体験をしていた場合「かもしれない」と実体験として想像を働かせられます。

 危機回避能力を高める遊びの代表として鬼ごっこがあります。鬼ごっこは後ろから追いかけてきてつかまる「かもしれない」、逃げる子が急に曲がる「かもしれない」などという状況予測を瞬時におこなうため、身体能力だけでなく予測能力の成長にも繋がります。

 外に出れば危険はたくさんあります。何をすると危ないか想像を働かせ、自身の身は自身で守る。子ども達には大きな怪我や事故に繋がらないよう、瞬時の状況判断が必要な遊びをたくさんしてもらいたいと思います。

(副園長:佐藤 毅佳)